以前のサイトのこのエントリの方でコメントをいただいたのですが、ふと思いついたことがあったので、こちらに書かせていただきます。コメントをいただいたみけ様宛のお返事口調になっていますがご了承ください。

二十数年ぶりに理解する

もうね、ラジオで真央ちゃんの声を聞くだけで最近涙ぐんでしまうのってどうなのと。なんで「姉の舞とカラオケで歌う」とかいうキロロの歌を聞いて泣いてしまうのってどうなの(決して好みの曲でないにもかかわらず)。こんな調子じゃ真央ちゃんが試合で滑ってるところ見るたびに号泣してしまうのではないかと。 …


みどりさんはこのラジオの対談でジャンプの話もちらっとしていたんですよね。それが興味深かったことを思い出しました。(これって私はブログにすでに書いていましたっけ?)

まず、みどりさんはずいぶん前(たしかバンクーバー五輪前だったと思いますが)、何かのテレビ番組で、真央ちゃんのジャンプの跳び方と自分の跳び方の違いを話していたことがあります。私にとって、とても印象的だったので、よく覚えています。
「自分は縦にバーンと直線的に跳び上がるタイプの跳び方だけど、真央ちゃんはそれまでの加速を利用して流れるように跳ぶタイプでやり方が違う」という指摘です。なお、当時は、違いを指摘しているだけで、どちらがいい悪いという意味での話ではありません。

それを覚えていたから、なおさらラジオでの対談の話が私の頭によく入りました。
みどりさんは陸上で飛び上がっても結構な回転数回れたそうです。一方、真央ちゃんは、自分は陸上ではそんなに回れないといったような返事をしました。するとみどりさん「でも2回転ぐらいはいくでしょう?」と言ったんですよ。そしたら真央ちゃん小声で「(私は)回れないかも」と。

ここ数年、回転が足りる足りないという話が、真央ちゃんに限らず女子の場合は特に問題になります。見ていると、どうも今時のジャンプって、加速を仮に利用しなかったとしてもジャンプは3回転跳べるというのが前提のようです。跳び上がるときの上方への高さが勝負というのかな。

最近、ほかの選手たちの練習風景でも、陸上でジャンプしてくるくるって回る練習しているのテレビで見かけるようになったと思いませんか? 典型的なのは羽生選手の試合前のウォーミングアップ風景で、彼の場合ほんとそればっかりよく見かけますよね。あと、普段の練習で、宮原選手が陸上で回る練習をするようになったというのも見たような記憶があります。

おそらくロシアの選手はもともとそういう練習に力を入れているのではないかと推測します。炎の体育会TVでプルシェンコ選手がよく出てきますが、本田望結ちゃんへの指導でもそういう場面がでてきて、ああやっぱりな、と私は思いました。

で、プルシェンコ選手の長年のコーチであるミーシン先生は、真央ちゃんのトリプルアクセルは回転不足だ(跳び上がる前に回転が始まっちゃってるように見える)とよく指摘しますが(そして特に日本のネット上で炎上するのですが)、そういう話って、その辺の跳び方の癖というか違いから来ているのかも、と思うわけです。

ちなみにミーシンコーチのお弟子さんたちはみな、決してジャンプ前に加速を利用しないジャンプをしているわけじゃなく、むしろ今時の羽生選手のように直前に小技を入れて(またそれが加点の対象になるからなおさらそうなるわけなのですが)いきなり縦の直線上に跳ぶ選手に比べればずっと、くだらない(というとまた反感買いそうですけど)茶々を入れることなく姿勢良くきれいにスーッと入ってきて、その加速も縦に跳ぶときにうまく利用するような形をとっているように見えます。でも、それはあくまで縦にも高く跳ぶためのものなんですよね。すごく合理的で、私はけが防止の意味でも理にかなっていると思います。

そして、みどりさんのジャンプはまさにそんな跳び方だったと思います。

でも、真央ちゃんの場合、スケートの軌道と加速を利用するというのと、縦に高く飛ぶという意識とで、うまくかみ合わない部分があったのかなあと。バンクーバー前の時、タラソワ先生のところで真央ちゃんがジャンプを崩してしまったのも、もしかしたら縦の高さ高さと指摘されすぎたりしてたのかも、などと思ったりもしました。

その後、信夫先生のところでジャンプを作り直し、私たちの目からすると美しく流れるようなジャンプできれいになりましたが、信夫先生が教えてくれることは、直前の踏み込みの力勝負で縦に跳ぶようなジャンプではないはずです。私は信夫先生のようにスケーティングがきれいならばその加速を利用してジャンプは跳べるという考え方を支持しているので、信夫先生や、ひいてはミーシンコーチの考え方のほうがけが防止の意味でも正しいんじゃないかなと思います(でも現実を見ていると加速「だけ」で3回転以上回りきるのは、女子の場合もはや物理的に厳しいのかも)。

考え方っていろいろですが、真央ちゃんがけがが少なめの選手だったというのは、逆に言えば今時の足の力勝負、足に過剰な重圧がかかるようなスケートをしていなかったからなのかもしれませんよね。でも、その代わり回転不足だ、不足だ、不足だって、まあ、ほかの選手だったら足りているだろうと気にとめられない足りていそうなときでも、足りないイメージつけられちゃって減点されてきました。

そしてこのたびの復帰シーズン最初の頃のトリプルアクセルのジャンプの飛び方は加速も使ってしかも縦にも高く行けてたので、真央ちゃんトレーニング方法少し変えたのかも、きっとみどりさんとの対談でも思い当たるところがあったに違いない、と心の中でわくわくしていました。

でも「足りていない」というイメージはジャッジにこびりついているので、ただでさえ厳しく見られるし、ちょっと調子を落とすとここぞとばかりにどんどん減点されるし、そうすればますます本人も迷いが出てくるだろうし、さらには物理的に体調が悪けりゃいいときよりは高くは跳べないのは当然でもあるわけで、ジャンプの意味ではきっと悪循環になります。

で、10代のほうがジャンプは有利かという話に戻りますが、体重的なバランスを考えると、いまのトレンドの、ジャンプの前には小技を入れて踏み切った瞬間にがーんと高く跳んで、ということを考えると、きっと有利なんだと思います。男女限らず。

実際、いま、一つ目のジャンプが3回転以上のコンビジャンプ跳んでて、回転不足とられない選手ってみな男女限らず「ほっそい」ですもの。それか小柄で相対的に体重が軽いか(真央ちゃんは女子の中ではわりと大柄なほうですよね)。そうじゃない選手は転倒するか、跳んでもプログラム中どこかで回転不足とられてたり、なってしまったりしてると思います。ほっそくない選手にとって、ジャンプのノーミスを続けるのは相当厳しい。また、高橋大輔さんはずっとステップの振り付けのようなスケートをしながらいきなりふわっと美しく3回転以上のジャンプも跳んだりできましたが、足を何度か壊しています。そのスケーティングスタイルはかっこよく見応えがあるけど、身体にはどう考えても無理があるんだと思います。

そういう意味でも、ジャンプの前に小技が入っているとさらに加点されるという現行のルールは選手生命縮めると私は思っています。