このエントリのタイトルがタイトルですし、浅田真央のファンの方々はすぐにわかると思いますが、次の引用はある国のソチオリンピック女子シングルフリーの実況放送の翻訳です。真央ちゃんのピアノコンチェルトの演技の後の実況。どの国の放送でしょうか?

アナウンサー:
ジュニア時代にトリプルアクセルを成功させた史上初の女子シングルの選手!
一度の演技(註:「試合」ですね)で3回のトリプルアクセルを成し遂げた史上初の選手!
私はこう言いたいと思います。
人生の目標は「信念を守り抜く事」で実現されるのであって屈服からは何も生まれてこないのだ、と!
彼女は決してこの高難度の技をあきらめませんでした!
この道のりは辛く、また孤独であったことでしょう。
しかし、天はあなたの地道な努力を決して裏切りませんでした。
解説者:
ああ、今日浅田真央がまた戻ってきました・・・!
本当に彼女をうれしく思います。
決して容易ではなかったでしょう。
アナウンサー:
彼女はこれほどに難しい技を決して諦めることはなかったんです!
解説者:
彼女が涙を流した時私たちも同じく泣いてしまいました…
この選手の…これほどの頑張りを目にしたからです。
昨日大きな失敗をしてしまったという状況下で、重圧に立ち向かい、今日はこれほど完璧で美しく
永遠に皆の心に刻まれるであろう美しく完璧な演技を届けてくれました。
本当に嬉しく思います。
彼女の涙を見て私たちも泣いてしまいました。
アナウンサー:
フリーが始まってすぐのトリプルアクセルを跳んだとき、私と○○(註:解説者の名前が入ります)は思わず口をそろえて「なぜSPで成功できなかったのよ!」と言いました。
このような大きなプレッシャーが伴う大会で、そのプレッシャーに立ち向かい自分の技術を発揮するというのには、非常に強い心を持ち合わせていなければなりません。
そうです、この選手は今まで一度も諦めようとはしませんでした!
この技(3A)が成功すれば高得点が期待できると多くの人が思うことでしょう。
しかし一旦失敗してしまうと3-3のコンビネーションジャンプに匹敵する点数を落としてしまうことになります。
それでも彼女は諦めずに挑戦し続けたのです。
解説者:
彼女にとって最終的な順位なんて重要ではないんだと私は思います。
大切なのは彼女が完璧で美しい演技を観客の心に残すことなんだと。
アナウンサー:
これは彼女にとって最後の冬季オリンピックであるとともに試合の舞台に立つ最後の日となるのでしょう。
彼女はついに完璧で素晴らしい演技を私たちに届けてくれました。
彼女は自分で言ったことを見事やり遂げてくれました。
彼女はトリプルアクセルだけに頼って魅せるのではなく、思わず息をのんでしまうような演技で観客を魅了したいのだと言っていました。
~得点発表後~
実益も名誉も手に入れるとはこのこと(註:というような慣用句らしいです)
ようやく彼女の笑顔を見ることができました。
この142.71という得点ですけれども、これはこのシーズン、すべての女子シングル選手の得点を超えるものなんです!

これは中国の放送で、解説者は五輪2大会連続銅メダリスト陳露(ルーチェン)です。そしてなんといってもアナウンサーの言葉の数々。浅田真央とは何かすべて言い表していると思います。真央ちゃんが競技に復帰するかもしれないということで、ふと見たくなった動画がこれでした。

公式試合でトリプルアクセルが認定された女子選手というのは昨シーズンのトゥクタミシェワ選手まで6人いるとのことですし、練習中という枠でいえば跳んだことのある女子選手はもっといたことでしょう。

ですが、この解説の冒頭にもあるように、ジュニア時代に早々と公式試合で決めてしまっていたのは真央ちゃんだけ。そして、彼女はバンクーバー後、ジャンプの跳び方を変えるためにそれまで習得してきたやり方を自ら捨て去ったわけです。それを3年かけて取り戻す作業をした。

かつてできた高度な技が、

容易にできなくなっていく中、

それをただ維持するどころか1試合3回も大舞台でやってみせたけど、

そのプライドの証を一度自らの手で根こそぎ捨て去って、

新しいやり方の教えを乞い、

その通りに習得して取り戻すなんて作業を、

実直にやりつづけて成功させたフィギュアスケート選手ってほかにいるんでしょうか? この先出てくるのかしら?

これからトリプルアクセルを試合で跳んでいく女子選手はみんな、それができたらもう嬉しく誇りに感じることだろうと思います。そこまでに至る努力と実力はまさに敬意に値します。でも彼女たちにとってのトリプルアクセルはもはや、現状女子で一番高得点のジャンプという価値でしかなく、一番難しいジャンプに挑戦しうまくできたという誇り以上のものにはならないだろうなと思います。だから早いうちに今度はもっと得点稼げる4回転やりますとかそういう話になっていくでしょう。

でも、真央ちゃんのトリプルアクセルに対する思い入れは、そういう次元のものではないでしょうね。少なくとも「挑戦するから偉い!」とか「一番難しいジャンプができて偉い!」なんていわれる程度のものじゃないということだけは(私が主張することでもないのだけど)はっきり言っておきたいと思います。

【ニコニコ動画】【中国語CCTV版(翻訳付き)】浅田真央 2014 ソチ五輪 FS

本当にこのアナウンサーの冒頭の9行ほど真央ちゃんをうまく言い表しているものはないですよ。これが日本の実況だったらと何度思ったことか。