ジャンプが不調のときほど、その選手の実際のスケーティングスキルがわかるものなんだなあと思った女子フリーの試合。

グレーシーのオペラ座の怪人見ていても、一つ一つの要素の出来やつなぎが昨年から格段によくなっているのがかえってわかりますもの。今シーズンしつこく、GG/ローリー・ニコル/オペラ座の必然性がわからない、と書いてきましたけど、今日見ていてローリーのねらいはやっとわかりました。言われていたことではありますが、確かに彼女からたおやかさを引き出したかったんでしょうね。

キャロル先生のところで教わっているスケーターはなんといっても姿勢の良さが特徴でしょうし、一つ一つのポーズをぴっぴっぴっと引き締める感じで滑ります。その辺はGGも昨シーズン後半の追い上げでかなり形にはしていました(ほんとにね、去年の全米選手権の時にも思ったんですけどグレーシーって努力家ですよ。きっとものすごい練習量をこなしていると思う)。でもなんだか無骨な感じが抜けなかった。それが今日見ていたら、変なたとえになりますけど今年の無良君みたいな重厚感がある優雅さに変わっているわけです。問題は、今シーズン私以上にジャッジのほうにオペラ座の怪人アレルギーみたいなものを感じること。もし曲があれじゃなかったら同じ内容の滑りだったとしてもPCSはもっと高かったかも……。

知子ちゃんもそれから昨日の昌磨君も韓国に来てから調子は決してよくなかったのでしょう。それにもかかわらずSP/FS通じてあそこまで滑れることに感心します。先日書いたことと重なりますが、ジャンプをノーミスでクリーンに滑る(これは試合で毎回毎回できるとは限らないこと)以上のこと(これは心がけ次第で試合で毎回毎回できること)が、この若さにしてできている。ミスに引っ張られてほかの要素がいつもより雑にならないんですよね。

「試合の時もノーミスで出来たらすごい良いけど、そればっかりじゃない」by 鈴木明子大先生

あらためて四大陸選手権はそれを感じた試合でした。昌磨君のFSなんて本人曰くの悔しさともどかしさと悲しさからきていたのか、後半殺気じみた気迫を感じましたし、知子ちゃんの後半のリカバリーぶりは日頃の努力の積み重ねのたまものだと思います。2人とも高校生なのに、あんな大舞台で追われる立場という嫌でも緊張してしまう状況の中、いつも立派だと思います。

デニスが自分のピークを2月に持ってくるようにしている(要するに年明け前の大会は練習試合)と言っていましたよね。それはそれで賢いやり方だと思うし、そういうふうにできれば本当にいいのですが、こういう大舞台でそういう風な合わせ方をしていられる、そういう余裕を持っていられるって、やっぱり国内の同カテゴリーで自分と実力が拮抗する選手がいないからこそだと思います。かつてのキム・ヨナしかり、ソチシーズンのカロリーナやプルシェンコしかり……。あるいは国内で実力者がいる中で、まだ3番手あたりの位置にいてシーズン前半の成績が多少悪くてもそんなに周りに騒がれないし怒られない、今回のポリーナみたいなケースですよね。

日本は幸か不幸か選手層が厚い。昌磨君なんて本来なら今日のポリーナみたいな扱いでいられるはずなのに、ジュニアグランプリファイナル以降、羽生君の体調不良に重なってしまったせいか、あたかも代わりに取材に差し出されたかのようにマスコミに大きく取り上げられ、今回シニアの選手と対等に争わなければならないというプレッシャーにさらされました。女子だって、今回の優香ちゃんみたいにふっとシニアの国際大会に出てみても6位というすごい成績をあげてしまうほどジュニアには無尽蔵に実力のある選手が控えている。そんな中で代表多くて3人ですか?その枠に入るためにはシーズン中のありとあらゆる試合でアピールしなきゃいけないわけです。男子シングルで日本人では一番よい成績を収めたダイスだって世界選手権には出られない。来年だって四大陸出られるかどうかもわからないラインにいるんですもの。

つまりですね、日本人選手が大一番に自分のピークを持ってくるのが苦手だなんていう指摘は間違ってるってことです。オリンピックや世界選手権だけいい成績を収めてりゃいいやなんてのんきな世界にいるわけじゃない。だから今回金メダルがとれなかったとしても、メンタルが弱いとかそんな問題じゃないんですよ。むしろ、日本人選手こそ、年がら年中とんでもないプレッシャーの中試合をこなしているのですからメンタルは相当強い部類に入ると思います。彼らの場合、試合の出来不出来はもはや確率の問題なのです。実際、同じく国内で競争が激しいロシア女子だって試合ごとに誰がどういう順番で勝つか確率の問題になっているような感じですものね。リーザが今でもまだB級試合にも出るのが理解できないって言われますが、私にはすごくわかる気がします。

グランプリシリーズではいい成績を収めたのに、オリンピックや世界選手権でいまひとつだとしても、私には何が悪いのかと思いますよ。そういう選手が出てしまう国こそよっぽどフィギュアスケートの振興には貢献していると思うし、そういう選手たちが仮にオリンピックでメダルを取れなかったとしても取った選手よりも選手としての真価が劣ることはない。この競技を見続けるファンが実際のところフィギュアスケートという競技が好きなのか、オリンピックのメダルに象徴される名誉が好きなのか、その辺の見極めをスケート連盟や広告会社は間違わない方がいいと思います。

女子フリーの感想っぽくなくなっちゃいましたが、ああ、そうだ、アレインのドクトル・ジバゴって2年目なんですって? 今日見てて、あれはあれでいいのかもしれないと納得させられました。広い雪原を颯爽と滑るソリみたいで彼女の良さが出てますしね。映画音楽をつかったスケートの表現が、何も映画の登場人物や内容を反映していなくてもいいわけですし。ギャビーを見ても思ったのですが、この2人の豪快さや颯爽とした感じには好感を抱きました。