四大陸選手権を控えた特集番組を見ました。知子ちゃんの特集もかなり興味深かったのですが、理華ちゃんの特集がとても面白かった。そこで感想を書くべく、いつものごとく一時停止してはテレビ画面の写真をスマホで撮ることに。すみません、PCにつなげてキャプチャーをデジタルのまま撮る方法がわからず、理華ちゃんや明子さんのお顔がまだら模様になってしまった画像もあります。あ、のっけの写真からだ……。

この特集は理華ちゃんが表現力をアップするために同門の先輩だった明子さんに指導を受けている様子を紹介したものでした。

明子さんの人の心をつかむ、いわば「表現力」というのは持って生まれたセンスの部分が大きいと勝手に思いこんでいましたが、この番組を見て考えを改めました。ものすごく理詰めで、ものすごく考えてやっていたことがわかるのです。というのも、理華ちゃんへのフィードバックの仕方がきわめて言語的だったから。言葉でここまで端的に説明できるというのは、感覚で身につけたのではない証拠ですね。

で、冒頭から私はこの言葉を理華ちゃんにぶつけてくることに感心。

IMG_3049

 

 

 

 

 

 

「試合の時もノーミスで出来たらすごい良いけど、そればっかりじゃない」

選手はみんな、毎日練習の前にこの言葉を10回唱えるべきですね。たとえば得点源の高い組み合わせのジャンプをプログラムにぶっ込んで高く跳んでりゃいいという価値観「だけ」じゃいかんのです!!! 全日本見てても思ったんですけど、女子だったら若い子はみなさん3回転3回転のコンビネーションジャンプはみんな跳びますよね。跳ぶものだから実況も将来は明るいみたいなこと言いますけれど、私はかえって心配になってくるわけです。ジャンプはノーミスでクリーンに滑る(これは試合で毎回毎回できるとは限らないこと)以上のこと(これは心がけ次第で試合で毎回毎回できること)がかえって見えにくくなるのではないかと。

現役の頃の明子さんの演技を見て、人の心を引きつけるのはうまいなあとは思っていました。ですが、私には見る目がないもので、それがどれだけすごいことなのかよくわかってなかったのです。今シーズンの試合を見ていて、明子さんの偉大さをつくづく感じました。GPSのシングルの出場者の演技をもれなく見ましたが、みなさん割と耳になじんだ曲、なじみやすい曲を選んでいます。でも曲に演技を引っ張ってもらっているんですよね。引っ張られてるだけならいいけど、ただの聞こえのいいBGMをかけて滑っているような選手だっていました。思い出してみると明子さんは(どんなミーハーな曲でも)曲を自分に従属させていた。女子シングルの場合、それができていた選手は本当に今シーズンのGPSは少ないように思いました(米国・ロシアの国内選手権、欧州選手権は全部見ていないのであしからず)。うーん、アシュリーと知子ちゃんと、ある意味ではリーザとかかなあ。

またも前置きが長くなりましたが、今回の理華ちゃんの特集のテーマは「猫背をどう改善するか」。なんと。私は目が点になりました。

散々本ブログで理華ちゃんの猫背をディスっていたもので……。やれ猫背だだの、手の動きが雑に見えるとか、自分でも書いててひどいなと思わないでもなかったのです。

明子さん、容赦なく指摘していきます。

IMG_3050

「最初のポーズから顔を上げた時に、ちょっと首がすくんでいるから」

IMG_3051

「元々姿勢っていうのは、すごく長久保先生たちが注意していて」

そりゃ私だって気がつくぐらいなのだから、理華ちゃんはそれはもうしょっちゅう言われていたんでしょうね……。

IMG_3052

「割と背中が丸まってしまう癖があったので」

けれども明子さんはさすがだと思ったのは、私と違って(当たり前ですけど)、どうしたら姿勢がよくなるか「言葉で説明できる」ことなんですよ。

IMG_3053

「(首と肩の距離をとり)すっと伸ばすと自然と背中も伸びる」

なるほど。猫背の私も今日は洗い物をしながら、ふと明子さんのこの言葉を思い出しましたね。そうそう首と肩の距離をとらなきゃと思って「くっ」っと意識してみました。

で、明子さんのアドバイスを理華ちゃんはどう受け止めているか。

IMG_3054

 

 

 

 

 

「すごい猫背なので」

IMG_3055

 

 

 

 

 

「こう滑ってて見苦しい」

いや見苦しいなんて、そこまで言うほどではないとは思いますよ。でも、なまじ背が高くて手足が長いから、かえって姿勢が目についてしまうというのはあるかもしれません。1月の羽生君の表紙のNumberで、ライサチェクは背が高いのをコンプレックスに感じていて猫背になりがちだった、とローリー・ニコルが話していました。平均より背が高い人ってそういうものなのかもしれません。ともかく、ずいぶん注意されていたんだろうな。

IMG_3056

「そこは明子さんからアドバイスをもらったことをしっかり気をつけて綺麗に滑れるようになりたい」

今シーズンはずいぶん理華ちゃんが話しているところを見ましたが、見るたびに彼女のキャラクターに惹かれます。見た目のイメージからはほど遠い素朴な話し方がすごくいいです。そのギャップがね。しかも、そんなふうに木訥な理華ちゃんが、ああいうメイクでスリラーを、自分で好きこのんで、自分の振り付けで、人前でフィギュアスケートの演目として披露してしまう。もうね、そういうことをやってしまうというセンスがすばらしいですよ。

男子シングルの場合、技術で押すか表現力で押すかだけでなく、自ら三枚目になって笑いをとるという分野(といってもあくまでフィギュアスケートの範囲ですけど)が一応存在しているのに、女子は自分を落とした笑いに走る選手がいないじゃないですか。結果、みんな似たような路線ばかりでおもしろみに欠けると常々思っていました。女子たるもの美しく、あるいは色っぽく、ないしはかわいらしくなくてはならないという、フィギュアスケート業界にありがちな「女子」という固定観念に縛られすぎだと。

え、ゾンビは去年ラジ子がやっていたって? でも、やっぱりあれは「かわいらしさ」の範疇を逸脱していない。一方で、理華ちゃんのスリラーは「女子」に逃げないところがいいんですよ。ああいう試みができる選手っていそうでなかなかいない。

話はそれましたが、明子さんの首と肩の距離をとるというアドバイスでここまで変化したそうです。

IMG_3057

 

 

 

 

 

明子さんはまだまだ容赦しません。手の動きもしっかり指摘します。

IMG_3058

「手をおろすのが適当に見える」

明子さんってほんと言葉の選び方が絶妙ですよね。私だったら「雑に見える」とか「汚く見える」って言ってしまう。明子さんは攻撃的で嫌みな言い方はしないけど、的確です。人に何かを教える場合、教えるとまで言わなくても伝える場合、こういう一つ一つの言葉の選び方は大事だと思いました。無駄にいやな感じを出して教わる側の心をかたくなにさせないところがいい。

IMG_3059

「しっかり止めたときに顔も上げる」

適当に見えないようにするには具体的にどうすればいいのか説明しています。それでここまでの違いを生み出すわけです。

IMG_3060

 

 

 

 

 

IMG_3061

「メリハリをつけよう」

そうなの、メリハリが大事なの。選手はみんな、毎日練習の前にこの言葉を10回唱えるべきですね。

IMG_3062

「コレオ(シークエンス)の前の走っていく所が、もうちょっとバタバタしない方がいい」

ぬぬっ? ためを作れってことかな。

IMG_3063

「イメージとしてはちょっと重い感じ」

明子さん自ら実演してみます。

IMG_3064

「『コレオがくるぞ』って感じが欲しい」

どういうことなのかもう少し具体的に説明してくれます。

IMG_3065

「あそこでアピールできると期待もできるじゃない」

IMG_3066

「今からコレオが来るんです!」って

常々思うのですが、審判たちも(あっちゃいけないことなんですけど)一日に何人も選手の演技を見てたら集中力が切れることってあると思うんですよ。はっきり言ってどの選手も同じような思い入れで見ていないと思うんです。頭がぼおっとしてくるだろうし、先入観もあるだろうし。

たとえばPCSも、この人よかったのになんでこんな点数しかでないの?ってよく思うのですが、一つにはすでにジャッジのミーティングでだいたいこの選手にはこの点数が妥当っていう目安が決まっているのではないかということがあります。ですが(ここから大事)その試合試合の出来具合によってその基準の点数から、その時々の演技によって上下幅を持たせるやり方をどうやらとっているんじゃないかと思うんですよ。だから、ジャッジの人たちがぼうっとしてぼんやり見てたら、その上にいくかもしれない積み上げができないのではないかと思うのです(GOE的にいうとプラスの評価ってやつですか?)。だから、これからちゃんと見ろよ!っていうアピールが大事ではないかと思いました。「審判ども、起きろよ!」っていう意味でね。そして次の試合につなげる意味では、やっぱりそうした「期待させる感」「コレオ見るのが楽しみだな」って思わせるアピールの仕方が重要なのではないかと思うわけです。

そういう意味では明子さんや髙橋君はうまかったですよね(逆にGGはそういうところが力不足なような感じがします)。言われてみればモロゾフの振り付けなんて典型的です。さあ、これからステップ始まりまっせ、見所が始まりまっせと、寝ぼけてても馬鹿でもわかるぐらい予告するじゃないですか。(だからこそその後の見所をしっかりやる、技術を見せなければならないわけで、そこが髙橋大輔と安藤美姫の決定的な違いでもありました。)

今はひたすらつなぎを入れてすべてが見所みたいな振り付けがトレンドなのかもしれません。ジェイソン・ブラウンのプログラムとかあれはあれでものすごく魅力的なんですけど、あれよっぽど注意しないと逆に単調になりやすいというリスクがあります。この辺、審判が寝ぼけててもレベルが低くても馬鹿でもわかる「ここからちゃんと見なさい!」というアピールっていうのは必要かもしれません。

IMG_3067

「最後のところで演技構成点のところでもガッと訴えられるか」

私がだらだらと書いていることを明子さんはさくっとまとめてしまう。

IMG_3068

「これぐらいかって思うか」

そうなんですよね。そうなのよ。「まあ、いいや、ミーティングで話し合った基準のこれぐらいでいいか」ってジャッジに思わせちゃいけないのよ。

最後に、この特集を見ていて明子さんの指導がすごいなと思ったのは表現力アップの方法として「顔の表情」に逃げなかったこと。(実際はカットされたのかもしれないけど)まったく言及していませんでした。そもそもフィギュアスケートなんですから、表現力なんて体の動きでなんとかするものです。モニターでしか見えない表情が重要だというならば、あんな広いアリーナに客入れるなと。遠くから見ても表現力がある人にはそれが見えてくるのは、顔の表情などで勝負してないから。もし、キム・ヨナや安藤美姫の演技を会場で見るといまいちだったというなら、その辺の問題だろうし、一方でプルシェンコは、テレビ画面で見るとやりすぎだと思えるほど体全体を使いますが、ああいうやり方はフィギュアスケートの基本、原点を思い出させます。

そうした体全体の表現を突き詰めて突き詰めて突き詰めてやりきって、それでもなお「顔の表情」があればいいと思います。

だからね「『妖艶な』っていわれてもやっぱりわからない」「『(長久保)先生は口を半開きにしろ』というけれど、半開きにしたまま滑れないですよ」「わからないなりにできるかぎりがんばります」といったことを、ぼそぼそと話している理華ちゃんは間違っていません。口を半開きにしなくても明子さんの言ったことを自分で消化してやっていけばいいと思いました。

なんとかこのエントリは四大陸選手権開会に間に合ったかな。