……と、その日、ソチのショートプログラムで16位に沈んでしまった真央ちゃんに信夫先生は言ったそうです。サッカーW杯日本対コートジボアール戦の敗戦の後、ある方が「真央ちゃんの方がよほどサムライだった」と指摘されたツイートを読んでその話を思い出してしまいました。

私、割とサッカーは好きなほうです。むしろフィギュアスケートよりも見る目はあるほうかもしれません。そりゃ自分にも公私ともに生活があってそれなりに責任も負っていますので、くまなく海外・国内クラブや代表チームのサッカーの試合をチェックしているわけではありませんが、少なくとも息子が生まれる前は、Jリーグの試合とか代表の試合とか暇があればよく見に行っていました。

なので、戦術的にあーだこーだと思うところはありますが、そんなものはもう他の色んな方々がさんざん討論していると思うので、私は精神論でいこうと思います。

真央ちゃんがソチのフリーの演技を振り返って色んなことを言っていましたね。滑走の前に「また失敗してしまうかもしれないけど、やるしかないと思った」とか。でも、一番話題になったのは、「ジャンプを跳ぶときに、そのつどお世話になった人たちの顔が浮かんだ、その人たちのために跳ぼうと思った」といったコメントだったと思います。ずっと「お世話になった人たちや応援してきてくれた人たちへの恩返し」という言葉を真央ちゃん繰り返していましたよね。

なまじアジアはW杯の出場枠が4カ国も保証されているので(さらに南米と大陸間プレーオフで勝ち抜けば5カ国)、日本の場合、観る側が出場して当り前の感覚になってしまってる感があるんですけど、W杯に出場できるだけでもすごいことなんですよ。試しにこれ見て下さいな。5大会連続出場の時点でかなり珍しいほうなんですから(韓国の8大会連続なんてそういう意味では相当なもんなんですよ)! わかりやすい例を挙げれば、ブラジルではイブラヒモビッチのゴールは観られません。残念ながら。

だもの、ワールドカップ出場というのはある意味自分の実力だけではかなわない天からの贈り物のようなものなんです。だから初心に返って、出場できる純粋な喜び、自分を支えてくれた人たちへの感謝、予選をいっしょに戦ってきたのにワールドカップの代表選手には選ばれなかった同僚たちの無念、そういうことを思い出してみるのもいいかもしれません。そうしたら力がわいてくるかも。自分たちのできることをすべて出し切った勇気ある戦いならば、順位という結果が伴わなかったとしても、日本のファンはみな「よくやった!」って思ってくれるはず。

たとえば真央ちゃんがソチで最終順位が6位だったからといって、あのラフマニノフの演技の素晴らしさはかすんだりはしません。

今日のアメリカとガーナの試合だって、どちらが勝ってもおかしくなかったわけです。アメリカはここのところの大会でガーナに決勝トーナメントで負け続けていたのに、ついに勝つことができて喜びもひとしおでしょう。メッシのいるアルゼンチンに対して逃げずに攻め続けたボスニア・ヘルツェコビナの試合は、観た後にすがすがしさを感じました。4点差でボロ負けしたスペインだってポルトガルだってまだチャンスはあります。だってまだ試合は3分の1しか終わっていないんですよ。

ワールドカップに出るような日本を代表する選り抜きの選手だって、人間です。思っていたようにうまく行かず、失敗したり、怖くなったり、緊張の糸が切れる試合もあると思います。ブラジルでも現に、サッカー強豪国と言われるような国々でさえ、すでに思わぬボロ負けを喫したりしています。でも、仮に一度や二度失敗したって、そうした恐怖を乗り越えられる力も持っているからこそ、国の代表に選ばれる人たちなのだと思います。

そうした喜びと失意の積み重ねがきっとサッカー強豪国と言われる国々が持つ伝統であり、歴史なのでしょう。

ともかく出られることだけでもすごいことなんだから、その純粋な喜びを忘れないで、勇気を持ちながらも傲慢にならず、謙虚でありながらも弱気にならずに。あとはやるだけやればいいんです! 頑張れサッカー日本代表! 沢山の人たちが応援していますよ。

……しかしまあ、どのように計算してもメダルは絶望的だったのに、一日も置かずに立て直してあんなすごい演技をやってのけた真央ちゃんの精神力……転んでもただで起きなかった根性は、並大抵なものではありませんね。