ピアノソロをバックに魅せるのは、実はとても難しいことだと澤田亜紀さんがコラムで説明していましたが、この曲で滑るとして何が難しいかといえば、3拍子であること、そしてソロの演奏なだけにテンポが一定ではないことだと思います。

アイスダンスもありますし、スケーターズ・ワルツという曲があるくらいなので、フィギュアスケーターが3拍子に身体を合わせることがそれほどたいそうなものではないと思われるかもしれませんが、私は決してそうではないと思います。実際、ほかの選手で3拍子の曲を滑る選手はあまりいないですよね。

私は若いときに趣味でアマチュアバンドを組んだことがあるのですが、ビル・エバンスが好きだからといって3拍子の曲をやってみようとしても、なかなかうまく拍をとれる人っていないんですよ。なんとかロストしないようにと、1泊目がやたら重くなってしまう。どっこいしょ、の「どっ」にやたら力が入って、激しく大げさな、美しき青きドナウ風になってしまう。4拍子の曲ならばりばりに演奏できる人でも。アマチュアレベルだからといってしまえばそれまでですが、音楽好きでそこそこ楽器を演奏できてそんなものです。ですので、いくら音楽に乗せるスポーツとはいえ、演奏するわけでもないのに3拍子に合わせて滑るのってそれだけで重たい拍の取り方になるものだと思うのです。

でも真央ちゃんは違う。仮面舞踏会とノクターンは同じ3拍子といっても全然解釈が違う。たぶん普通の選手が滑ったら、ノクターンだろうとスケーターズワルツだろうと、どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ…という重そうな滑りになってしまうでしょう(今の真央ちゃんが仮面舞踏会やったらはるかになめらかに滑ると思いますが…真央ちゃんのあの2つの仮面舞踏会も大好きでした)。

で、ただでさえ、そんな拍の取り方が難しいのに、あのノクターンはピアノソロで、あえてリズムにぶれを出している演奏です。それなのに、合っているんです。緩急すべて。後半ピアノが加速するところも、さあ~って加速していく。にもかかわらず、何がすごいって、そんなたいそうなことしているように見せずに涼やかさがあるところ。トリプルアクセル跳んでても重たくならないところ。

ほんと成熟したプログラムだと思います。こう言ってしまうと元も子もないのですが、そんじょそこらのミュージカルの曲を滑るよりもレベルが違うと思いました。